私は「着物」と「きもの」は全く別の物と考えています。
「着物」の語源は「着る物」。
日常で着るものほとんどの人が「洋服」になったいま、現代における着物とは洋服のことをさしているのでは無いでしょうか。
呉服屋を営む私の元にさえ「普段、きものを切る事が無い」、「きものを着る場所が無い」とかおっしゃるお客様がいますが、まさしくその通りだと思います。
昔と違って「きもの」は普段着(着る物)ではなくなってしまったのですから。
今は、紬の着物(昔は普段着の着物だった)だからといって、掃除や洗濯、家事をする時にわざわざ着る人はまずいないと思います。
現代では、皆さんがイメージしてらっしゃる着物は本当は「呉服」と呼んだ方がいいのかもしれません。
又、普段の着る物は穢(ケ)のきもの、フーマルで着る物は晴れのきものといった棲み分けは昔からありますが、現代の「きもの」は「晴れのきもの」として着る方が、圧倒的に多いでしょう。
そんな、晴れのきものを着ていただくにあたって、三つの資格を備えて頂くことが望ましいと思っています。
どのような資格か?
それは「時間のゆとり」「お金のゆとり」「心のゆとり」です。
まず、きものを着るには、きものを着る為の準備が必要。
例えば、和装用の小物を揃えたり、きものと小物のコーディネイトをするうえで、「きもの」の事をある程度、知っておく必要がありますから、勉強する時間が必要です。
きものに合った髪型、お化粧をしたり、着付にも時間がかかるため、時間に余裕がなければ着る事に対してネガティブになってしまいます。
次に、お金のゆとり。
当然、本当のきものは高価なものでから、一揃えしようとするとかなりの高額になります。
又、着た後の毎回のお手入れ。
「きもの」の素材はほとんどが絹なので、クリーニングも特殊で高価。
所有すること、着用する事にお金とゆとりが必要と言う事です。
最後に一番大切な心のゆとり。
やっと買ったきもの、でも、誰かに汚されないかハラハラ、ドキドキ。
これでは、折角着たきものがかわいそうです
そんな風にゆとりを持たずにきものを着ている人を見ると、見る人がみれば分かります。
どこかぎこちなかったり、かっこ良くなかったり、上品ではなかったり。
できるだけ大人のゆとりをもって、心のゆとりをもってきものを着て欲しいもの。
きものを着る時は、覚悟を決めましょう
こうした覚悟を決めたとたん、凛としたカッコいい姿になれますよ。
現代人にとって、着物は自分を高めてくれるステータスシンボル。
三つのゆとりを持った上で、着物を着こなしてる自分を想像してみて下さい。